Kurihara-Group
植物胚発生における胚性再獲得の解明
植物は茎や葉を切断しても、その切断面から新しく根や茎を伸ばし、新たな個体を再生できます。植物が持つ高い再生能力を活かし、挿し木など古くから園芸・農業に利用されてきました。植物細胞は分化した後も全能性を発揮でき、それにより高い再生能力をもつことが知られています。近年、我々はモデル植物であるシロイヌナズナにおいて、受精卵の分裂過程(受精胚発生)をin vitroで詳細に観察・解析できる系を確立し、フェムト秒パルスレーザーで胚始原細胞である頂端細胞(胚体細胞)を破壊したときに、隣接していた胚体外細胞である胚柄細胞が細胞運命転換をおこして、再び胚を形成する驚くべき再生能力を明らかにしました (Gooh et al., 2015)。本プロジェクトでは、我々が確立したシロイヌナズナin vitro胚発生系を利用し、胚発生過程において細胞運命制御機構・胚性再獲得機構に関わる細胞間コミュニケーションの分子実体を明らかにするとともに、生命の根幹をなす仕組みに潜む普遍的なメカニズムの発見を目指します。
植物雌性配偶体をモデルとした細胞運命制御機構の解明
植物の雌の生殖細胞である雌性配偶体には、受精をする細胞である配偶子を一定の数にするために周囲の細胞の運命を維持するメカニズム、また配偶子に異常が起きた際、周囲の細胞の運命を転換させ配偶子を新生するメカニズムが備わっています。細胞内・細胞間コミュニケーションを介した細胞運命の決定・維持・転換機構を1 細胞レベルで明らかにすることで、植物細胞を維持する・産み出す制御システムの解明を目指します。
植物深部観察を可能とする技術開発
植物の体は、根や茎、葉、花など様々な器官を持ち、その形態や役割も多種多様です。それらの役割を明らかにするためには、植物の内部構造の詳細な観察が必要です。しかし、植物の内部を直接観察するためには解剖などが必要で、ありのままの状態で観察することは困難です。我々は植物を丸ごと透明化し蛍光顕微鏡観察できる透明化試薬ClearSeeの開発など技術開発を通じて細胞レベルの現象と個体全体をつなぐシステムの解明を目指します。